企業人の「越境」プログラム 3/4開催レポート 「まちづくり」の取り組みを紐解いてみよう!

この3月より会社の越境学習プログラムとして大手自動車会社から1年間宮城県石巻市雄勝町にある公益社団法人MORIUMIUS(モリウミアス)へ派遣されることが決まった小野佐弥香さん。今までの社会人生活では地域との関わりがほとんどなかったため、まずは都内近辺での地域活動に関する情報収集を開始されました。その情報収集活動の一つとして、茅ヶ崎市にあるコワーキングスペースチガラボの清水謙さんのところへ訪れることになりました。湘南地域で行われているプロジェクトのうち2つを紹介しながら、「越境とは」、「まちづくりとは」、「地域とのかかわりとは」ということの理解を深めるための場として企業人の「越境」プログラムを3/4に開催し、お互いの情報を交換する機会となりました。
今回はその様子をイベントレポートしてお送りいたします。

※公益社団法人MORIUMIUS(以下、モリウミアス)とは、東日本大震災で町の8割が壊滅した宮城県石巻市雄勝町で、築90年を超えた旧桑浜小学校の木造校舎を、地元の人やボランティアのべ5000人が約2年半掛けて改築し、2015年夏にオープンした子どもたちが循環型の暮らしを学べる宿泊型体験施設。HPはこちらから

(プロフィール)
小野 佐弥香(おの さやか)さん/
トヨタ自動車株式会社 自動運転・先進安全開発部
2020年3月より越境学習の一環で宮城県石巻市雄勝町のモリウミアスへ1年間派遣予定

清水 謙(しみず けん)さん/
ヒトコトデザイン株式会社代表取締役、コワーキングスペースチガラボ代表
EdiblePark(エディブルパーク)茅ヶ崎、湘南ワンハンドレッド・プロジェクト、
他多数のプロジェクトの企画・運営に携わる

石井 光(いしい ひかる)さん/
EdiblePark(エディブルパーク)茅ヶ崎、shareliving縁と緑 運営管理者
藤沢市辻堂地域の大家としてまちづくりにつながる様々な活動を実施

山口順平(やまぐち じゅんぺい)さん/
パーソルイノベーション株式会社インキュベーション推進室、湘南ワンハンドレッド・プロジェクト 湘南100CLUBリーダー。
都内で会社員として働きながら、茅ヶ崎にて地域プロジェクトのリーダーとして従事

清水: 今日はチガラボまでお越しいただきありがとうございます。
小野さんが今回モリウミアスに派遣されるということで、お話したいと思っていました。

小野: こちらこそありがとうございます。清水さんは何度かモリウミアスに行かれているのですよね?

清水: はい。私は主に都内の企業を対象とした研修として越境プログラムの運営に携わっており、何度か伺っています。今回小野さんが派遣された後も別プロジェクトで行く機会があるので、現地でもお会いすることになると思いますので、よろしくお願いします。今都内近辺で情報収集をされている段階だと思いますが、いかがですか?

小野: 今まで見えていなかったのですが、最近情報収集をし始めて、NPOとか、地域活動とか沢山やられている団体があるんだなということを知りました。私が仕事で関わる人はいわゆる研究職の方なので、車をどう動かすかとか数字に興味を持つ人が多く、まちづくり分野に興味を持つ人が周囲にそれほど多くありません。地域活動に携わっていらっしゃる方とお話するのは新鮮です。

清水: どちらかというと担当領域を掘り下げていくような仕事だからですかね?

小野: そうかもしれません。

山口: 今回は派遣のきっかけは何だったのですか?

小野: 実は自分から手を挙げたわけではなく、上司からの推薦で派遣されることになりました。トヨタは車づくりからモビリティカンパニーへの転換点にいると言われています。今まではトヨタがいて、サプライヤさんがいて、一緒にモノづくりをするという関係だったのですが、モビリティカンパニーになるといった時に、いままでお付き合いのなかった異業種の会社さんと協業するための関係を築く必要が出てきています。そうした背景の中、モビリティカンパニーへの転換のためには今までとは異なる取り組みが必要だと会社も考えています。それで異業種派遣という取り組みが始まりました。私はその中でもベンチャー派遣枠ということで、雄勝町のモリウミアスに行くことになりました。

清水: ベンチャーと言っても形態は様々ですよね。一定の形が出来ている会社であれば何らかの枠や会社のやり方があると思うのですが、モリウミアスの場合は何が異色かというとどこまでの枠、線、形というものをどの方向にどこまでというのを自ら描くということを圧倒的に求められると思います。それを誰に聞いても答えは出てこないし、合意もない。ただ無いから動けないと言っていたら終わってしまう。自分なりにどういうプロセスで見出していくのかを描くのが最大の難しさであり、そのうち快感に変わるポイントですね。

小野: 快感にしちゃったら自社に戻れなくなっちゃいますね(笑)

清水: よく海外赴任で裁量権を与えられている人が国内に戻ってきたときに窮屈さを感じて辞めてしまうということがあります。むしろトヨタとしては視野が広がった状態でまちや地域を見直して、今までの自分のフィールドを広げて仕事をしてほしいという期待があるのかもしれませんね。

小野: 今モリウミアスはこどもたちに自然とふれあうことを通じた学びの場を提供していますが、それだけではなくて「まちづくり」に関わっていくという話を伺っています。ですので、派遣期間の大きなテーマとしては、まちづくりとなるのですが、聞こえはいいけど中身どうするんだっけ?ということが問われてくるので、それを具体化していくことに関わっていくことになると思っています。

清水: モリウミアスとしてどうしたいのかは聞いていますか?

小野: まだそこはあまり理解できていないのですが、キーワードとしては雄勝の方は緑、自然を大事にしたいということはおっしゃっています。あと最近の気付きとして、まちづくりというのはみんなのビジョンが既に決まっていて、それを具体的に手続きを進めるものかと思っていましたが、そうではなくて個々に生まれて活動しているプロジェクトを総称してまちづくりになるものなのだということを聞いて驚きました。

清水: そうですね。さらに言うと、雄勝という地域自体が石巻市の中でも周辺地域という失礼な言い方をされてしまう飛び地エリアにあたります。加えて震災でほとんど人がいなくなってしまったという地域でもあります。地方創生の研修で同行した時に、初めて訪れた企業の人達が一番ビックリするのはまちが無いということです。まちづくり、地域というと町並みがあって、家・人・お店があってということを想像すると思いますが、雄勝には何にも無いんですよ。高台のところに公園や団地がある。団地といっても4戸くらいのものがいくつか点在しているという状況ですので、町並みという雰囲気は無いわけです。

小野: まちの中心部で雄勝ガーデンパーク構想というものはありながらも、どう進めていくのかというのはこれからという段階のように感じています。

清水: そうですね。まずは、そういう計画を考えてきた方の中にある「こういう形にしていきたい、していきたかった」という想いを拾い上げていくことが大事かもしれませんね。地域の中で何かを描いていく時に大事なのは、もともとあった地域のライフスタイルや歴史や文化的背景といったDNAを理解すること。それを無視してしまうとその場所らしいまちにはならないわけなので、まずは地域の人の声を聴くということをされたほうがいいと思います。とはいえ、もともと住んでいた方が離散してしまっているので、声を拾い上げることが難しいという点ではトップクラスの難易度だと思っていていいと思います。

小野: トップクラス・・・

清水: ただ、その中にも絶対的に意志を持ったプレイヤーが明確に存在しているので、その方々とどう進めるかということにはなると思います。それ以外にも雄勝出身だけど今は違う場所に住んでいる人と関係人口としてつながるというテーマもあると思います。

湘南エリアの地域プロジェクトについて ①

Edible Park(エディブルパーク)茅ヶ崎HP

清水: そうしたら湘南エリアの具体的なプロジェクトのご紹介を通じて、何かヒントになることがあるかどうかディスカッションしていければと思います。ではまず石井光さんのほうからお願いしてもいいでしょうか?

石井: はい。自己紹介から進めさせていただきます。生まれも育ちも茅ヶ崎のとなりの辻堂です。周辺も古い家柄が多く、うちの家も代々続いている大家で私が十二代目にあたります。
学生の頃は生物多様性に興味があり、その後コミュニティデザインに興味が移って、生き物と人のことを併せてパーマカルチャーに興味が広がってきています。

小野: モリウミアスにも水を浄化する装置があると伺っています。

石井: バイオジオフィルターという装置ですね。キッチンやお風呂の排水を自然の仕組みを活用し水を浄化する仕組みです。パーマカルチャーは活かし合う関係性のデザインと言われることがあります。3年前くらいにパーマカルチャーを学び、今は実践に移りはじめています。
具体的なプロジェクトをご紹介すると、まずは「エディブルパーク茅ヶ崎」です。
簡単に言うと貸し農園になります。農業とか興味ありますか?

小野: 実家の庭で家庭菜園をやって、たまねぎとかスイカとか作っていました。

石井: それはいいですね。よくある普通の貸し農園だと、一定の区画を貸してくれて周囲の方とも特に触れ合う機会が無いという印象だと思います。エディブルパーク茅ヶ崎は無農薬無化学肥料で微生物を活かしながら作物を育てて、ニワトリを飼って、みんなで採れたものを使って料理をしながら、メンバーがお互い出来ることを増やしていくようなコミュニティを運営しています。

メンバーは現在15人くらいですが、800坪をみんなで管理するのでかなり広いです。また、先生がいるわけではないので、正解を教えてくれる人がおらず当たり前に失敗できるということ。試行錯誤を繰り返しながらですが2年半くらいかかって土壌の質が向上してきていて、作物が育ちやすい環境が出来てきました。そして、その作物からこの土地にあった種が出来て、その種を収穫してまた来年に備えることもできました。

最近だと大豆を作って味噌作りをしました。そして当初から使用していた井戸が壊れてしまったので、それをメンバーで修理したり。それぞれ好きなこと、得意なことに取り組んでいる感じです。

小野: そうした取り組みはメンバーの方からやろうという話が出てくるのですか?

石井: 今は月1回みんなでミーティングをしていて何をしたいのかを確認し合うことをしています。その時に課題とかやりたいことを出し合っています。

小野: それはみなさん集まれるものなのでしょうか?

石井: 人によります。毎週土曜日は定例作業日にしていて、毎週来る方もいれば、お忙しくてそこまで来ることができない方もいます。それはそれで全然問題ないと思っています。そのため、ふらっと来た方がその日何をしていいかわからないということが無いようにアナログの伝言板を作って、そこでお知らせをするなどの工夫は行っています。

あと、特徴的なのはチキントラクターです。移動式のニワトリ小屋です。ニワトリは卵を生むだけではなく、雑草を食べて畑を耕してくれる機能を担ってくれたり、みんなに癒やしを提供してくれるという機能も果たしてくれています。

清水: そこにいる方の好きすぎるものがはっきりしていますよね。濃さがあるというか。何かを作るのが好きな人もいれば、ニワトリが好きという人、種を採取するのが好きな人とかいますよね。

小野: 逆に特に得意なものが無いという方にとってはどう感じるのですかね?

石井: 反応は分かれるかもしれません。自分の興味関心が広がるから楽しいと思う方と、少し距離をおきながら進めたいという方もいると思います。そういう方は定期的にやっているイベントだけ参加しているという方もいますね。

小野: このコミュニティが仮に居心地がよくなかったとしても、その人たちでまた別のコミュニティを作っていくような発展が出来たらいいですよね。

清水: 大学のサークルとかと一緒ですよね。サッカーやりたいといっても、体育会系のサークルもあれば、あまりガチでやりたくないところもありますよね。ソーシャルプロジェクトも同じかもしれません。プロジェクトの発展としてよくスケールアップとスケールアウトというのが対比されます。スケールアップというのは自分たちの事業・プロジェクトが大きくなることで、スケールアウトというのはプロジェクトに所属して知識を得つつも、自分は自分で主催の別プロジェクトを起こしていくというものです。これは類似の活動をするプレイヤーが増えるという点で、総和で考えるとその活動は広がっているといえるわけです。広がり方が自ら大きくなるのか、横展開するのかという違いです。ですので、スケールアウトで広める場合は、真似をしやすくするというのが重要です。再現可能性のある大事な部分を持って、その手法や方法論を外に開くというのが大切だったりします。企業の自社利益総取り的な考え方だといかに見せなくするか、いかに特許で知財を守るかという話になるじゃないですか。いかに早くやるか、いかにお金を投下して力でひっくり返すかというのがよくありますよね。そういう競争パラダイムとは別で、いかに誰もができるようにするかを考えた時に再現可能性、手っ取り早さ、気軽さという観点を持てているかはすごく大事だと思います。

小野: 関係人口にグラデーションがあるのかなと思いました。
関わったことがない人をコミュニティに入れるならその橋渡しとなる道具を貸し出すとか卵かけご飯の会にまず来てもらうようなハードルを下げるような取り組みがいいのかなと思いますし、深く関わりたい人には自分のやりたいことを自由に発揮できる場を運営するということですかね。

清水: そうですね。関わる人が何を受け取って何を置いてってくれたらそれぞれの立場にとってハッピーになるのかというデザインがとても大事ですね。それ事業性の観点でも、コミュニティをデザインするという観点でもあると思います。雄勝らしいやり方、エディブルパークらしいバランスとか按配がきっとあるのでしょうね。

石井: コミュニティのフェーズはあると思います。今はメンバーが自発的に何でもやって、実践が大事という状態ですが、一番はじめは何もわからないから教えてほしいという受動的な時期もありました。なので、それぞれのコミュニティが今どういう状況なのかというのをお互い共有できると学びがあるのかなと思います。

湘南エリアの地域プロジェクトについて ②

湘南ワンハンドレッドプロジェクトHP

清水: では2つめのプロジェクトは湘南ワンハンドレッドプロジェクトです。湘南ワンハンドレッドプロジェクトは『100歳時代』をゆたかに生きるための、30代~50代からの地域参画の仕組みづくりを行うプロジェクトです。「かながわボランタリー活動推進基金21」で採択され、神奈川県との協働事業として運営をしており、その中の3つから構成されるプロジェクトの1つ湘南100CLUBのリーダーである山口順平さんから紹介してもらいます。

山口: 最初自己紹介をすると、普段は都内で会社員をしながら、主に週末などを活用してプロジェクトを進めています。3年ほど前に会社の人事制度を活用して、1年間会社を週4勤務に変更し、週1日を使って地域活動をはじめ、自分の市民活動団体をつくった経緯があります。テーマとしては、地域の高齢者に注目をしています。高齢者を支えるだけでなく、一人ひとりのシニアがもつ可能性を最大限に引き出して、現役世代の我々とお互い学び合い、活かし会う関係を作りたいと思っています。
具体的には、マイレジェンドインタビューといって、自分らしく、豊かに人生を歩んでいると思う方をマイレジェンドと呼び、その方の生き方・暮らし方を現役世代がインタビューをしています。最高年齢は91歳で、下は16歳の高校生という場合もあります。
インタビューするだけでなく、その人が今後やりたいことも伺いながら、一緒にそのやりたいことをプロジェクト化していく取り組みも進めています。

清水: だいぶ取材も進んで色々なつながりが出てきましたよね。

山口: そうですね。例えば、四條さんという方がいらっしゃるのですが、その方はもともと大手企業でエンジニアのプロジェクトマネージャーを経験され退職後に、HPを1から学び直しHP制作会社を立ち上げました。さらにHP制作について自分が学んできたプロセスを同じようなシニアの方に教えていきたいという想いで、湘南100CLUBの中で自分のやりたいことを発表し、仲間を集い、NPO法人セカンドワーク協会を立ち上げることに成功されました。

清水: 四條さんは自分一人でHP制作を進める以上に、多世代で若い現役のデザイナーやマーケターと組むことでより出来ることが広がるのではないかと可能性を感じていらっしゃいますよね。地域の情報発信機能を担えるのではないかということや、多世代で取り組むことの面白さを実感されていますよね。

山口: はい。セカンドワークには、シニアのセカンドキャリアという意味と、現役世代の副業・複業というセカンドの両方の意味が込められていて多世代の広がりを目指されています。

清水: 四條さんの素敵なところは、会社勤めの頃は1000人規模のプロジェクトをマネジメントされていたりと、かなりのビジネスキャリアをお持ちですが、偉ぶる素振りを一切出さないというか。未熟な現役世代に対してもフラットに接してくれて、柔軟に対応いただけるところですね。あのような柔軟な態度を取れるようになるにはどうしたらいいのか深く掘り下げるのも面白いかもしれませんね。

小野: プロジェクトを進めている上での課題は何かありますか?

山口: こちらのプロジェクトは神奈川県の補助金で成り立っている部分があります。プロジェクトの持続性を考えた時に、収益性という点で取り組み方を考える必要があります。

小野: 企業とNPOではやはり取り組み方は違うのでしょうか?

山口: プロジェクトの主旨として人生100年時代を豊かに生きるためには、現役世代からの地域とのつながりを持つことが大事だということで取り組みをしているわけですが、記事などによるプロモーション活動にはなっていると思います。一方で、誰かがお金を払ってでも解決したい何かになっているかというと、現時点では出来ていません。次の1年間でプロジェクトを進化させていきたいポイントかなと思っています。

清水: 山口さんは会社員のほうではビジネスとしての新規事業に関わる部署にいて、地域では新たなプロジェクトを推進することに関わっています。今はそれぞれ別のものとして磨きをかけていますよね。そのうちそれぞれの活動が相互に行き来しながら、絡み合っていくのかがネクストステップになるのかもしれませんね。

山口: そうですね。仕事とかプライベートとか分けずにやりたいことをつなげていきたいですね。

清水: プロジェクトの収益モデルでいくと、直接受益者からお金を支払ってもらうモデルがいいのか、別の第三者から広告的にお金を支払ってもらうとか全体としてどういう座組にしたらうまくいくのかを検討する必要があるかもしれません。
例えば、車を作って売るという1対1の関係をつくるのと、モビリティカンパニーとして移動というものをまちの中でどう成立させていくのがいいのかを考えるのとでは性質が全然違って、使う脳みそも違うと思うんですよね。後者の視点で、まちとか地域とかを成立可能な形を見出していく。だからこそ世代とか属性を越えてその人の得意分野を見出していく多様性というテーマはすごく大事になってくると思います。
湘南ワンハンドレッドプロジェクトは世代の違いやバックグラウンドの違いでお互いが学び合い、共創的な価値創造につながっていくといいですよね。

小野: 身を持って様々な経験されているのが伝わってきました。

山口: ありがとうございます。動いてみてわかったこと、繋がったご縁をこれからも大切にしていきたいです。

清水: 今日はエディブルパーク茅ヶ崎、湘南100CLUBを中心に2つご紹介しましたが、湘南ではこんなプロジェクトが至る所で進んでいるという状況です。

これからの雄勝プロジェクトの進め方について

小野: 今日清水さんに聞きたかったことがあるのですが、雄勝のことも知っていて、まちづくりにも関わっている清水さんが仮に雄勝で新規事業をやるとしたら何をやりますか?

清水: なるほど。難しいですね。私のやっている領域は、そこら中を「ラボ」にするということですので、「雄勝ラボ」を作りますかね。

小野: 「ラボ」というのはどういう定義なのでしょうか?

清水: 私の中での定義ですが、出来得る限り多様な人、違いの振れ幅が大きい人が混ざるというのが一つ。あとは、事業性があるないに関わらず、テーマの幅も問わずに何かが生まれる場であるということ。もうひとつは、ラボの中で閉ざされた形で取り組むのではなくて、さらにその外から入ってくるビジネスや行政のセクターなど色々な人が出入りしながら有機的につながりながら生まれたことを育てていくということですかね。
そんなそれぞれのラボがさらにシナプス的に相互乗り入れしていくことができるといいと思っています。

小野: なるほど。

清水: 雄勝でいうと雄勝ガーデンパーク構想というフィールドがあり、自由度を持って何かができそうだということ。モリウミアスのような海外と直接繋がれるような強力なプレイヤーがいて、海外の大学・アーティスト・大企業が出入りして認知度があるという強みがあるということ。そのあたりはまず活かせそうですよね。さらに直近の話ですと、雄勝支所がいままでは仮設プレハブで運営していたところが、本設の施設が出来上がるので、プレハブが空くんですよね。例えばそのプレハブをサテライトオフィス化すれば、ネットワーク環境もあるし会議室も駐車場もそのまま活用することができると思います。そうすれば一定期間滞在することもでき、仕事として活動出来るので、雄勝ガーデンパーク構想を色々な人が出入りしながら作っていくことも可能かと思います。そうすれば、企業研修や出向みたいな形での人材育成やコーディネートを行うことで収益化を図ることも出来るのではないかと思います。さらに、そこから生まれた事業がラボに対して収益を還元するような仕組みがあると取り組めることが広がるようにも思いますかね。

小野: その構想は面白いですね。

清水: どうしても私の頭はラボ的な発想になるので、エディブルパーク茅ヶ崎も実はエディブルラボなわけですよ。石井さんというコーディネーターがいて、世界観を持ちながらコミュニティデザインとか事業性を考えながらその場を作っている。そして石井さんはそのビジョンが自分の中で拡張して他の場所でも同様の取り組みをしようとしているわけですよね。それはラボとしても自走して発展していっているということだと思います。すべて自分の中で抱え込むのではなく半開きで他に広がっていく形が面白いのではないかと思っています。

小野: 今ふと思ったのが、まちづくりというと自分でやらなければいけないと思いこんでいたのですが、違ったと思いました。誰かを呼んできてやってもらうという視点があると全然違うことができるかもしれないですよね。私自身も1年間という限られた中での活動になるので、自分がいなければ活動が回らないという状況になってはいけないなと思いました。

清水: そうですね。ラボは基本的に借り物競争の発想で、周囲の人をどう活かすかという視点でその場を回すことを考えたほうがいいかもしれませんね。

清水: あとは様々な地域で良い事例が沢山あるので、それを調べるといいと思います。最初はどこを見たらいいのかわからないと思いますが、そのうち相対的な違いが見えてくると思います。その時に特に収益の話、「どうやってお金を回しているんですか?」ということを絶対聞いたほうがいいと思います。それがわからないとどういう仕組みで動いているかわからないじゃないですか。でもなぜか社会的事業はお金の話を全体的に避ける傾向にあるので、あえてどんどん聞いちゃったほうがいいと思います。

小野: 確かにそれはあるかもしれませんね。今後意識してみます。

全体の感想

石井: 小野さんのことを通してトヨタも大きな転換点を迎えているということを感じることができました。また、エディブルパーク茅ヶ崎の取り組みと、雄勝の取り組みで類似することもありますし、私自身モリウミアスに行きたいなと思いました。パーマカルチャーの取り組みでも情報交換する機会が今後もあったら嬉しいなと思います。

山口: 小野さんが今インプットされたことが今後どのようなアウトプットに繋がっていくのかとても楽しみです。まちづくりというとなんとなく行政的なニュアンスがあると思いますが、ラボという言葉を使った瞬間に開かれた関わりたい場の雰囲気に変わるなと思ったので、演出も含めて言葉の選び方という点で気づきがありました。

小野: どれもこれも新鮮な話でとても勉強になりました。まちづくりにおける規模とか収益性とかこれから課題になると思われる点を具体的な事例を元に事前に知る機会になりました。また清水さんのほうで具体事例を元に紐解きながらそれはどういう意味があるのかというのを説明頂いたので、とても理解が深まりました。これから現地に行くのですが、モリウミアスで1ヶ月に1回はオンラインでつながる場もあるので、ぜひこれからも情報交換できればと思っています。

清水: 地域に入っている人は孤軍奮闘になりがちなので、オンラインの場でつながる機会を設けているんですよね。オンラインの場では、現地の取り組みの発表をただ聞くこともできるし、やりたくなったら現地に行くこともありというコミュニティになっていったらいいですね。チガラボでイベント的に雄勝とつながる会を飲みながらやってもいいですね(笑)私も雄勝に伺う機会があると思いますので、今後も宜しくおねがいします。

<取材>山口順平
<撮影>石坂佳佑
<文>山口順平、もりおかゆか