失敗は、大したことじゃない。 何歳からでも、新しいことは始められる。

湘南を代表する、歌声喫茶のリーダー・西信光さん。演奏を本格的に始めたのは実は会社を退職したあと、60代で始めたストリートライブがきっかけだったそうです。ギターに、クイズ・川柳、ボートづくり(?!)……人生を遊び、楽しみ続ける西さんの、自分らしく生きる秘訣をお伺いしました。


(西 信光さんプロフィール)
製薬会社にて営業、営業企画、企画宣伝などに携わる。退職後はストリートライブでの出会いをきっかけに、茅ヶ崎珈琲店での歌声喫茶をはじめライブを300回以上実施。現在は介護施設でのボランティア演奏会をはじめ幅広い活動をしている。

―こんにちは。本日はよろしくお願いします

西 こんにちは。私の経験がお役に立てるかわかりませんが、よろしくお願いします。

―とんでもございません。謙虚でいらっしゃるのですね。歌声喫茶をしている西さんというすごい方が茅ヶ崎にはいると伺い、ぜひお会いしたいと思っていました。茅ヶ崎の南口にあった茅ヶ崎珈琲店などで歌声喫茶・歌声サロンを300回以上開催したと伺いました。

西 はい。茅ヶ崎珈琲店のオーナーであった一杉繁さんと仲良くなりましてね。そこで歌声喫茶を実施しようという話になりました。

―昔からのお知り合いだったのですか?

西 いえいえ。退職してから音楽を始めて、ストリートライブをしていたら、一杉さんが「ぜひうちで歌声喫茶をしてくれないか」と声をかけてくれましてね。それからのお付き合いです。

―いきなり気になるワードがたくさん出てきたのですが、退職されてということは60を過ぎてから路上ライブをお一人で始めたのですか??それだけ音楽が好きだったということですね。

西 いやいやそれが意外と音楽とは無縁でしたね。

現役時代は、製薬会社で働いていて、退職したあとは自分の家のリフォームに精を出していました。家具やウッドデッキを作ったり。ただ、それを続けていたら、言葉が自由に出てこなくなってきたのです。いわゆる失語症のようなものでした。

―それは大変ですね。

西 地域活動やPTA会長をやっていた妻が、外に一緒に連れ出してくれました。

そんな頃に茅ヶ崎のエメロード商店街で自作のクリスマスソングのコンクールがあることを知りました。「応募してみたら」という妻の気軽な誘いがきっかけで、応募をすることになり、それが予想外に、準優勝になりました。

―そんなドラマのようなことがあるものなのですね。

西 その曲は、イギリスに留学していた娘に、ピアノもギターも習わずに作ったオリジナルクリスマスソングでした。そうしたら、商工会の係の人や「ほっとちがさき準備室」の要請で月に一度商店街で弾くことになりまして、猛練習を始めました。そうしているうちにストリートライブもやるようになって。仲間も増え、街の人の温かい声援に支えられて、続けてくることができました。

―あの、失礼ながら歌声喫茶というものがよく理解できていないのですが、どういうものなのか改めて教えていただけないでしょうか?

西 はい。歌声運動という、第二次世界大戦後の日本における、合唱団の演奏活動を中心とした、大衆的な社会運動・政治運動がもとになっています。東京・新宿に登場したのが始まりとされ、ピアノやアコーディオンなどの生演奏に合わせ労働歌や愛唱歌などを全員一緒に歌って楽しむといったものですね。

―アート的な要素というより、社会運動がもとになっているというのは知りませんでした。

西 音楽を通して自分たちの意志を伝えていく。当時は、そんな風潮だったように思いますね。

―昔の西さんがどんな方だったのかとても気になってきました。どんな学生だったのですか?

西 いやいや。挫折の人生ですよ。大学で挫折し、恋でも挫折し……

いきなりですが、クイズです。「古ければ古いほど若くなる」さてなんでしょう?

―えっ……

西 正解は……アルバムの写真です。古いものから順番に貼ってあるでしょ。歌の合間のMCに川柳やクイズなどを取り上げて場を盛り上げるようにしています。

―昔の西さんの話は・・・完全にはぐらかされましたね。一度お会いしたくらいではまだ教えていただけないということと捉えます(笑)また教えていただける機会があれば教えてくださいね。では、逆にこれからの夢を教えて頂くことは可能でしょうか??

西 そうですね。一隻船を作りたいですね。船舶免許も持っていますし、船検(車で言う車検)をパスした船を作ったことが一度ありましてね。

―船を作ろうと思ったきっかけ、なにかあったのですか?

西 自分の釣りたい方法で、釣りたい魚を自由に釣りたいと思ってね。

最初は乗り合いの船釣りに出かけたんです。そうしたら、集団で行くので、時間も釣り方も決められているし、窮屈な感じがしてしまいました。「もっと自分のペースで釣りたい」って思ってしまったのです。

―そうしたら船を作ろうという発想になるのがすごいですね!

西 病膏肓(やまいこうもう)というやつでしょうね。馬鹿は死んでも治らないかな(笑)

人真似はしたくないし、真似をしないためにはいろいろと調べなければならない。独創的な船を作りたいと思ったら、まず設計する楽しみがある。次に作る楽しみがあり、最後にそれを使える楽しみがある。3つの楽しみが出来上がるまでにあるわけですよ。当然思い通りにいかない。でもそれも楽しい。それを乗り越えることに楽しみがありますね。

―西さんだったらどんなことでも乗り越えてしまいそうな気がしてきました。

西 基本的に遊ぶことが好きなんですよ。とにかくのめり込んで一生懸命やるところはありますね。

 

 

―お話を聞くと、西さんが音楽にのめり込んだこともわかる気がしてきました。

西 実は、ギターは全くの独学なので、より簡単な方法で自分の音が出せるように工夫しています。プロの人が聞いたら弾き方が違うと言われるかもしれませんが、自分は「これでいいや」と思っています。

―「これでいいや」って思うのは簡単なようで、難しいことだと思います。西さんのようにギターをうまくなりたい人にはどうアドバイスすればいいですか?

西 簡単です。一番の練習方法は人前で演奏することです。大抵の人は、もう少し弾けるようになったら外で弾いてみよう、と考えますよね。もったいないです。外で弾くタイミングは人が判断するのではなく、自分で決めるんです。弾く機会が欲しい方はぜひ言ってください。私の歌声サロンで一緒にデビューしましょう。

―西さんとだったら勇気が出る気がします。最後に伺いたいのですが、人生100年時代を豊かに自分らしく生きるためには何が大事だと思いますか?

西 失敗したって所詮大したことないよということでしょうか。

小人閑居して不善をなす。つまらない人間が暇でいると、ろくなことをしない。プラスマイナスがなく、淡々としていることのほうが不幸せと思います。

―西さんが発する一言一言にとても重みを感じました。私もこれからの人生で失敗経験を増やせるように挑戦していきます。今日のインタビューは以上です。ありがとうございました。

<インタビューを終えて>
インタビュー時も、歌声喫茶・歌声サロンの時も奥様と一緒に行動を共にされているとのことで、お互いを支え合うまさに理想の夫婦像だなと感じました。西さんのひげがトレードマークでとてもダンディーなお見た目ですが、語り口調がとてもやさしく、物腰が柔らかく、とても紳士な方だと感じました。また、「自分は自分。これでいい」という自分で納得感をもって生きている姿勢が、失敗を恐れず行動できる原動力なのかなと感じました。

インタビュー:貞包 英樹、有福 潔、山口 順平
写真:岩井田 優
編集:もりおか ゆか