夜寝るときに、明日が楽しみと思える人を1人でも増やしたい―16歳が切り拓く“自分の道”、その志。

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2019年9月に開催された第2回世界青少年「志」プレゼンテーション大会にてファイナリスト13名に選ばれ、堂々たるプレゼンを見せた16歳の三橋龍起さん。「志やビジネスとはまったく無縁だった」という三橋さんは、尊敬する父親の死をきっかけに“周囲の愛”そして“今”の大切さに気づき、志を見つけたといいます。週3回N高に通い学業に勤しむ傍ら、高校生ながら株式会社17 Media Japanでのインターンシップを希望して経験するなど積極的にアクションを続けています。三橋さんの原点、軸に触れ、“今”こそやりたいことに踏み出そう。

(三橋龍起さんプロフィール)
2003年生まれ、16歳(インタビュー当時)。2019年に鵠沼高等学校からN高へ転入。週3回都内キャンパスに通いながら、さまざまなイベントに参加している。第2回世界青少年「志」プレゼンテーション大会(2019年9月開催/主催 一般社団法人 志教育プロジェクト)ファイナリスト。「世界中の人々が、夜寝る前に明日も楽しみだな、と思える社会をつくること」を目指し、活動を続けている。

― 龍起くんは現在高校2年生で、今はN高等学校(以下N高)に通っているそうですね。

三橋 はい。2019年9月に鵠沼高等学校からN高に移りました。最初の1か月はネットコースに在籍し、10月からは代々木キャンパスに週3回通っています。

― N高に移ったのはなにか明確にやりたいことがあったから?

三橋 やりたいことが決まっていたというよりも、何かをするための時間が欲しかったからですね。学校って基本的に教科書をなぞる授業が多いでしょう。僕はもともと勉強が好きで中学のうちにある程度の知識はつけていたので、何もしなくても模試やテストでは割といい点数がとれてしまっていたのです。それで、学校以外に自分で興味があることを調べたり、イベントに行ったりしていました。けれど、もちろん学校にいる間はできないですから、睡眠時間を削ることもあって学校が負担になり始めたんです。これは良くないな、と調べ始めたとき知ったのがN高でした。タイムマネジメントさえできれば、ここが一番使えると思ったんです。ちょうどインターンシップの話があったこともあって。

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― 高校生でインターンシップやろうって、なかなかないよね。

三橋 そうかもしれないですね(笑)。でも自分はインターンシップって言葉を知ってから2か月後には始めていました。もともと僕は、この6月まで何も知らなかったんですよ。ビジネスなんて考えてもいなかったし、いい大学、いい企業に就職することだけで。

え! じゃあほんとにこの半年で大きく変化したと。

三橋 はい、たまたま以前の高校で文化祭実行委員と生徒会活動推進員の副委員長をやっていて、新たな視野がほしくて東京のイベントに行ってみたら、すごい学生や大人がたくさんいて。そこで誘われたイベントにはとりあえず全部行っていたら、たくさんの情報が集まってきました。夏にはたまたまFacebookでつながった方の紹介で、メルカリとかLINEとか錚々たる企業も参加しているイベント「IVS(Infinity Ventures Summit)」のスタッフもやりました。そのときにIVSの代表だった17 Media Japan(※イチナナライブの配信アプリ運営会社)の社長と出会うことができて、インターンシップ先を迷っていたところ、(17 Media Japanの社長の)ご好意で学ばせてもらいました。

― 9月には、第2回世界青少年「志」プレゼンテーション大会も参加していたよね。プレゼン、聞きました。

三橋 ありがとうございます。プレゼン大会に出るきっかけになったのは、6月に参加した「中高生といろいろあったけど今が一番楽しい大人との対話の会」で、はじめて父が亡くなって辛かったことを話したとき、「君、プレゼン上手いね、プレゼン大会に出たら」と言われたことです。そして、プレゼン大会の前に参加した「志セミナー」の北見俊則先生との出会いも大きいです。過去の捉え方を教えていただいたり、自分がどういうことをしたいか、自分の本質に気づけたことで軸を作ることができました。一番変わったのはこのときですね。プレゼン大会を通じて「世界中の人々が、夜寝る前に明日も楽しみだな、と思える社会をつくる」という軸が明確になりました。これを実現することを目的として、そのための手段となることをいろいろとやりたい、その手段の一つに起業があります。

※ 第2回世界青少年「志」プレゼンテーション大会でのスピーチの様子

― その軸は、どこから生まれたのですか?

三橋 原体験は中学3年生で父を亡くしたことです。僕の父は消防士で、人生で初めて「この人には追い付けない」って思うくらい尊敬していました。

父はとても努力家なんです。それに、カリスマ性があって。もちろん喧嘩もしましたけれど、結局はいつも「パパは龍起の一番の味方だよ」って言ってくれていました。その父を受験期真っ只中に亡くして。普段通りしているつもりだったのですが、やっぱり勉強には身が入らなくて、第一志望校に落ちてしまったんです。父が亡くなってから受験→卒業→高校、そして高校に入ってからは勉強と部活をやる日々で考える時間がなくて。なんか楽しかったけれど、やっぱり寝る前になるとめちゃめちゃ悲しくなったり……電気を消して、目をつぶって眠ることもできなくなりました。これが「夜寝る前に明日も楽しみだと思える人を増やしたい」という志のきっかけとなりました。

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― そこから抜けたのは、何があったから?

三橋 ある日気づいたんです、「俺っていろんな人に愛されてる」「応援してもらっている」って。父が亡くなってからも、友達や家族は「いつも通り」接してくれていたんですよね。父が亡くなるという非日常の中にあたりまえがあることが本当にありがたくて。愛されている、多くの人に支えられているって気づいたとき、自分の存在価値を見出しました。同時に、だったら、自分はもっともっと学び、かつ、たとえいつ死んでもいいように、それを人に伝えていきたいって。

― 鳥肌立ちました。「愛」。

三橋 僕は、そこに気付けたことが一つ強みだなと思いますね。愛してくれる人、味方になってくれる人がいるって知っているから、例え陰口を叩かれても気にならないんです。それに、「今の学校を辞めてN高に行きたい」って言ったとしても、きっと辞めせてくれる親って少ないと思うんです。うちも、母は保守的な性格ですし、よく認めてくれたなって本当に感謝しています。そう考えると、自分の置かれた環境は本当に恵まれている。

― 今自分が持っているものに気付くってことですよね。つい、「あれも、これも、ない!」って不安になる。

三橋 それって、“今”を考えることとも通じているんです。10年先を考えるのが難しい世の中で、過去から分析して先に備えようとする人も多いですけれど、僕は、それより今のこと考えようよ、って思うんですよね。父の経験で、明日死んだら元も子もないってことを知っているから。“今”の在り方、“今”の大切さを学ぶことが重要だと思うんです。

― 失敗することを恐れて、一歩を踏み出せないことともつながるのかな。

三橋 それよく言われることだと思うんですが、僕の場合は、「失敗って誰が定義したもの?」って思うんです。失敗をつくっているのは、人の捉え方だったりします。

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例えば寝坊したとして、それを「失敗した」と考えるか、「脳がちゃんと休めたから今日はうまくいくはず」と考えるか。後者で考えられたら、めっちゃポジティブだし、ストレスも減りますよね。もっと簡単に言えば、テストで90点をとっても嬉しい人と悲しい人がいるのと同じです。事実は一緒で、それをどう捉えるのか。僕はこれを対応力の一つだと考えていて、事実と、主観と、客観と、それを分ける考え方は伝えていきたいなと思います。

確かに、そう捉えられたらストレスも減るよね。龍起くんがそう思うようになったきっかけは?

三橋 気づいたのは2つの経験からです。一つは、さきほども話した「中高生と、色々あったけど今が一番楽しい大人との対話の会」で人生曲線を描いたこと。そのとき、マイナスのところも自分の捉え方で変わるなって思ったんです。それから、大嶋啓介さんのセミナーで「思い込み」の話を聞いたこと。ミジンコってジャンプ力がすごいんですけど、高さ3mmのガラスケースに3日間いれておくと、10mm飛べていたやつが3mmしか飛べなくなるんです。でも、そこに1匹10mm飛べるやつをみせるとみんなが飛べるようになる。この2つがつながって、「人間の可能性も思い込みなんだ」って気づいたんです。気づけたことがラッキー、知らないということが一番きつい。それを伝えていきたい。

― アンテナがしっかり立っているよね。例えば同じイベントや環境にいても、別の人だったら気づかないかもしれない。

三橋 そうなんです、だから、誰かに環境を提供したいというよりも、学び方や考え方を伝えられるようにしたいんです。N高も、僕はとてもいい環境だと思うんですけど、使い方を知らなければ十分には生かせない。

― それってまず大人に必要な力かも。学び続けることは、人生100年時代と言われる今、大人にも必要だからね。龍起くんはポリシーにしていることはある?

三橋 物事の目的は絶対に考えるようにしていますね。それがわからないままだとやりたくないし、苦手になる。それから、僕は直感的に動くのが好きなんです。直感的に面白いと思った場に行って、そこで生まれる偶発的な出会いがいいなって。それに、まずは自分が行動することで、人からの応援や手助けを得られるようになるんですよね。そういうことも含めて、この5か月間でたくさんの学びがありました。もちろん、まだまだですけれど。学ぶのは学生だけじゃない、大人も学ぶのをやめたら止まりますよね。

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僕は、アクション・インプット・アウトプットの3つで成り立っていると思っています。とりあえず直感的にアクションして、そこで情報をインプットし、それらをつなぎ合わせて生まれたものを人に伝える。アクションに対して後付けで分析しているんですよ。

― そのスピードが速いんだね。

三橋 それはよく言われますね。僕、人と話すときでも常にスマホは持っていて、わからない言葉とかはすぐに検索するようにしているんです。で、それを即使う。使うことによって定着するというのもあるし、僕の性格的に、人から聞いたことをすぐ誰かに話したいっていうのもある(笑)。

― スマホか。メモはとるけど書きとめるだけで終わっちゃうんだよね。

三橋 メモするなら、その場で検索して、その結果をスクリーンショットで残しておくのもいいですよ。そうすれば結果と合わせて残せるし見返せます。

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― なるほど。その流れで、ネットの活用方法は?

三橋 ネットは、有益に“見えている”ものも多いですからね。うのみにせず、自分にフィットするものだけを選ぶこと。でも、すべて同じですよ。例えば、ホリエモンが言っていたら正解、自分もやる、ってことではないじゃないですか。情報を一回、自分ごととして捉えて自分の言葉にしないと。「ホリエモンが言ってたから」って前置きをすると自分の言葉じゃなくなっちゃうんですよね。

― 龍起くんのプレゼンが心に響くのって、自分の言葉になっているからなんだね。

三橋 プレゼンは、人に信用されることと思っています。データを活用して見せる手法と気持ちを伝える手法があるけれど、僕は後者の方がいいなと思ってパッションを大切にしています。場を感じとって伝えています。

― ちゃんと伝えよう、と思えば思うほど考えすぎちゃうんだよね。

三橋 伝えたいことを言っても100%は吸収されませんよ。さっきのネットと一緒で、聞いた相手が何を持って帰るのかって、相手次第ですから。自分(話し手)が整理する必要はない、自分が伝えたいことを伝えたい。だから僕はうまくやろうとか考えたことないですね。いいものがあったら持って帰って、って(笑)。前、友達とピッチイベントに参加したことがあったんですが、ほぼ準備してなかったですね。時間だけ見ながら思うまま話そうって。

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それができるのって、日ごろから考えが整理されて引き出しが多いからだよね。なにかコツはある?

三橋 色々な人と話すことで気づくこともありますね。普段から喋るのは好きですし、今でも毎月100人とかのペースで新しい人と会います。それから、気になったことはメモしますね。キーとなることだけ。いいと思ったことだけピックアップして残しているからごちゃごちゃしないのかも。

― 龍起くんがこれからやりたいことは?

三橋 僕の大きな目標は、「世界中の人々が、夜寝る前に明日も楽しみだな、と思える社会をつくる」ことです。まだまだ知識が足りないので、明確にその手段はわからないですが、ひとまず高校生のうちに起業はしたいと思っています。それから、最近同じ高校生や大学生から相談されることも多いので、オンラインサロンや相談はやっていきたいですね。直近で2020年には、高校2つか3つくらいで講演もできたらと思っていて、今、2つは決まりかけているんですよ。

― すごい!

三橋 人と話すことは怖くなくなったかな。自分に自信がなくて、何もできないと思っていたけれど、そういう自分も受け入れてくれたチガラボの存在はすごく大きかったなって思います。いまだに交流会とかでは何を話していいかわからないけれど(笑)。

― 今後の課題は?

三橋 うーん……難しい質問ですね。たいていすぐ行動に移してしまうので、課題ってあまり感じていないんです。本当は、これをやれば必ず起業に成功するってプロセスがあれば楽なんですけど、そうはいっても、それだとつまらないから。少しずつでも学びながら理解していけたらと思っています。

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あとは、海外にも視野を向けたいですね。英語と中国語は勉強したくて。その2つが話せれば、全世界の半数の人に自分の言葉を伝えられる。それってとてつもなく大きなメリットです。それに、言語を知ることは文化を知ることですから。もちろん同時に、日本の精神も学んでおきたいです。

― 龍起くんは、理想にしている人やこれから会いたい人はいる?

三橋 話せるならだれとでも話したいですね! 僕より長く生きて経験豊富な方がたくさんいると思いますから、新しいところや変なところに連れて行ってもらえたら嬉しいです。

僕、基本的には同じことができるなら俺じゃなくてよくない?って思うから、新しいことしたいんですよね。そうすると、必然的に、理想とする先駆者はいなくなる。もちろん、ライバルも。それもあって、誰かと比べるというよりも、理想の自分と今の自分を比べているんです。理想の自分は日々アップデートされていて、今できることを着実にすることで、次の自分を目指していきたいです。

―「龍起くんがこれから茅ヶ崎から大きく羽ばたいてくれるだろうなと確信しました! 今日はありがとうございました。

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<マイレジェンドから学んだこと>

今回三橋さんの話を伺い、人は年齢では判断できないものだと思い知らされました。 三橋さんはすでに自己を確立し、自分がどうありたいのか、そのために何をするのか、 その未来のためになんでも吸収したいという意欲にあふれ、ワクワクしている姿は 私たち大人が学ぶべきところが多々あると感じました。 三橋さんは、お父様の死を乗り越え周囲の愛を感じ、自身が満たされていることに気づいたことで 今度は誰かのために貢献したいと考えている。 その志を生み出すサイクルは世の中においてとても重要なことになると思いました。私たちが一緒にできることを考え、行動していきたいと思います。(順平)

「中高生といろいろあったけど今が一番楽しい大人との対話の会」で龍起くんと出会い、彼の「志」が心に響き、いろんな人に知ってほしくてインタビューさせていただきました。16歳にして、みらいのレジェンドです。家族や多くの人に愛されていることに気づいてから、誰かのためにできることを考え動きだした。直感的にアクションすることで、いろんなヒト・モノ・コトと出会い、つながって新たなものを生み出している。そのスピード感が半端ない。それができるのは、ゆるぎない軸があるからだと思いました。モノごと捉え方しだいだからストレスはないと言います。先を見据えて「今」を大切にしているからでしょう。何だかすごい説得力です。16歳の龍起くんからたくさんの学びを得ました。ありがとう! 私にできることは、いろいろな人とつなげること、彼の志が実現するよう応援したいと思います。(昌美)

取材:山口 昌美、山口 順平
撮影:岩井田 優
文:もりおか ゆか