年を重ねるほどに身軽に、楽しむ。やりたいことに正直に、ときには自分を褒めることも忘れないで。

「頑張っている人を応援したいのです!」と、どんなときでも誰に対してもキラキラの笑顔を向ける有賀康江さん。50代でITサポートスクール・ひまわりを起業した有賀さんは、「SNSではだれよりも先に“イイネ”やコメントするようにしているんです」と話します。忙しい毎日の中でも勉強を続け、新たな目標を掲げて突き進む有賀さんの原動力はどこあるのか? お話を伺いました。

(有賀康江さんプロフィール)
50代になってから ITサポートスクール・ひまわりを起業。マンツーマンレッスンを基本に、カフェやコワーキングスペースなどで出張型のパソコン教室を開いている。

 

ーはじめに、現在有賀さんがされている活動から教えてください。

有賀 50代にはいってから起業して、現在はITサポートスクール・ひまわりを運営しています。マンツーマンレッスンを基本に、パソコンやスマートフォンの講座を行っていて、昨年あたりからは、企業講師にもお声かけいただけるようになりました。とはいっても、もともとITの世界にいたわけではなく、25年ほど事務職をしていたんですよ。

ーそうなんですね。そこからどうしてITスクールに?

有賀 体調を崩して事務職を退職して、やりたいことを模索していたとき、職業訓練のインストラクター養成講座を受講したんです。受講して、「天職だ」って感じて。それでパソコン教室で講師を始めました。

最初に勤めた教室は、カリキュラムが決まっていて。例えば、ショートカットキーとか、生徒さんにとって便利なことをお伝えしたいと思っても、「それは初級の範囲外だから」と(運営側から)言われることもあって。わたしとしては、ピンポイントでその人が知りたいところだけお教えしたいと思ったので、副業で、出張型の教室を始めました。そうしたらそっちのほうが面白くなって。始めた当初は9時~18時でパソコン教室に勤めていましたから、勉強や交流会に行くにはお休みをとる必要があって、ついには有給休暇を使い果たすくらい。それで、「どちらが大事?」って考えたとき、副業としてやっていた出張教室のほうを選んだんです。4年前、8月30日に起業をして、同じ年に教室はやめました。

ー有賀さんが人生のテーマにしていることはなんですか?

有賀 「なんでも楽しんでやること」が一番ですね。仕事も楽しむ。湘南地区は、起業されている方や、ハンドメイドの作家さんなど趣味を仕事にしている方が多い印象があります。マルシェとかも多いですしね。SNSの投稿も見かけたりしますけれど、写真一つにも、そのものを愛している気持ちってわかるんですよね。反対に、気持ちが中途半端だとそれも伝わりますし、やらされ感がにじみ出ているものはとても残念。そのものが好きで、楽しんでいる。そういう人にこそ、話してみたい、教わってみたいと思いますよね。だからわたしもクライアントにとってそういう人でありたいと思うんです。

ーまさに、「マイレジェンド」は人生をワクワク楽しんでいる方から学ばせていただくのがテーマです。有賀さんは失敗された経験はありますか?

有賀 死ぬほど、というと大変だけど、基本的に失敗もすべて糧になる学びだと思っています。わたしの場合、くよくよするのも面倒だから、「今の状況も楽しんじゃおう」って割と前向きに、都合よく考えます(笑)。今は試練の時なんだな、って。

でも、今思えば起業するときにはもうすこし慎重に始めてもよかったのかなとは思いますね。「やりたい」という気持ちだけでスタートしたので、ちゃんとしたホームページや、メニューの用意もしていなくて。勢いで行動するのはもともとの性格でもあるんですけれど(笑)、周りの方に恵まれて、応援していただいて、今に至っているのでそれはよかったですね。

ー「周りの人に恵まれて」って有賀さんのお人柄ゆえですよね。ご苦労もされていると思いますが、有賀さんに会うといつも明るい気持ちになれます。

有賀 ありがとうございます。「ひまわり」って屋号に込めた想いもあるんです。ひまわりって、夏の日差しを浴びてキラキラ笑っているようなイメージがあって、わたしも、よくみなさんから「元気をもらえる」と言っていただけるので。

ーこの連載は、「人生100年時代を自分らしく豊かに生きるためには?」というテーマがあります。有賀さんはどうお考えですか?

有賀 年を重ねるほど、柔軟性のある思考や行動が大切だなと思います。どうしても頑固になってしまうところがあるでしょう。頑固になって「食べず嫌い」していたらもったいないなって思います。年齢があがるほど、アドバイスを受けることも少なくなりますが、子ども世代くらいの人たちと話すことで得ることもたくさんあります。出会いとご縁を大切に、いろいろな方とお話して、柔軟性を持つ生き方を考えたいですね。

出会いという点では、コワーキングスペースが多く出てきているこの時代の波にのれたことは、とても意味がある大切なことだったなと思います。わたしは事務所を持っていないので、コワーキングスペースを拠点にしているんですが、ここでも思わぬご縁をいただいたりして、こうした場所があるからこそ、今の自分ができました。家や家族とはまた違った良さがありますよね。

ー有賀さんが今後やっていきたことを教えてください。

有賀 わたしはあと3年で60歳になるのですが、60歳を区切りとして、起業塾を開きたいと思っています。50~60代の方で、自分の好きなことで起業したいという人も増えています。そういう方々を支援したいんです。ノウハウをお教えするだけではなく、周囲の理解を得ることも含めて、起業するとき壁になることや悩みもサポートしていきたい。わたしも起業するときには親に「今になってなぜ?」って反対されましたし、悩んだこともありました。気持ちと身体って対になるものです。だから、自分に矛盾がないようにしないと。起業の段階に応じて、少人数からサポートをしていきたいです。

湘南台にあるシートハウスというコワーキングスペースを拠点の一つにしているのですが、そこは女性起業家支援を中心にされているんです。起業塾はそこで始めようと思っていて、昨年からいろいろな方の力を借りて準備を進めていますので、今年の終わりには実現したいと思っています。

ー自分のやりたいことを追求したい、起業してみたいと思う女性へ伝えたいことはありますか?

有賀 自分の原点を忘れずにいてください。起業したいと思ったのには、必ず、経験や伝えたいことなど原点があったと思います。でも、進んでいくと辛いこともあるし、初心を忘れてしまうことが出てきます。進んでいくことは大切だけれど、時々立ち止まって、「今、大丈夫?」って自分に聞いてあげてください。そして、自分で自分を褒めてあげてください。なかなかみんな自分を褒めることをしないけれど、頑張りって人と比べることじゃありません。みんな頑張っている。だから、自分で自分をハグしてあげて。緊張を緩めて、気持ちの余裕をもってくださいね。

ーわたしの場合、「やりたい!」って思うのと、「あれ?なんか違うかも…」の繰り返しなんです。

有賀 慎重なんですよ。考えることも大切ですよ。わたしは勢いで始めるタイプだから、慎重に考えられる方は逆にうらやましい(笑)。一人ひとり、やり方やペースは違いますから、自分に合ったペースを見つけて、それを崩さないように進めば大丈夫ですよ。

ー人生100年時代を生きるために、有賀さんご自身が考えていることを教えてください。

有賀 まずは健康第一!わたし、今の仕事をあと30年は続けたいと思っているんです。続けるためには仕組化も考えなければいけないし、健康寿命も考えないと。それから、ともに進む仲間も大切。あと、昨年から特に強く意識しているのは、地元貢献です。今の自分は、湘南なくしてはできないことだと思っていて、地域に根付いていくことの大切さを感じています。だから、たとえ自分の直接の利益にはつながらなくても、ビーチクリーンに参加したり、AED講習に行ったりしました。自分の知識を地域に還元していくことは大切にしていきたいです。

ーいつもワクワク、キラキラしている有賀さんですが、元気の源はなんですか?

有賀 コワーキングスペースで出会うみなさんをはじめ、人とのコミュニケーションですね。人と人の関係性ってすごく大切です。それは、パートナーや家族の存在も同じ。人間、「ずっと元気!」をキープはできないですから、多くを語らなくても、自分を理解してくれる人や場所があることは大切だと思います。

ー最後に、人生100年時代を生きるためのメッセージをお願いします。

有賀 自分が「やりたい」気持ちに正直になってください。組織に所属していると難しいかもしれないけれど、「やりたい」という気持ちが一番の原動力になります。ただ、ずっとモチベーションを保つことは難しいから、落ち込んだ時にはこうすればもう一度頑張れる、とかキーになるものを一つ見つけておくといいですよ。人でも、ものでも、行動でも。

若いころは、多少粗削りでもエネルギーで押せるところもあるし、逆にそれが魅力でもあるけれど、気持ちが若くても体力の衰えはどうしてもくる。だから、若い人と比べるのではなくて、「年齢を重ねたら重ねたなりの生き方を楽しもう」って思うことが大切で、そうすると楽になると思います。わたしも、50代で起業してから、「いきいきしているね、若くなったね!」といわれることも増えました。年を重ねるからこそ身軽に、考えすぎずに楽しみましょう!

ーありがとうございました。

 

<マイレジェンドから学んだこと>
いつも明るく楽しそうにされてる有賀さんは50代で起業され、頑張ってる人を応援したいという信念のもとクライアントの一人一人に合わせた細やかなサービスを提供して信頼を得ています。無理のない自分に合ったペースでやりたい気持ちに正直に進めているという有賀さんの生き方には、ヒントがいっぱいありました。

インタビュー:菊池奈々
撮影:岩井田優
文:もりおかゆか