どんな結果でもオールOK。“ねばならない”に縛られず、心が面白がることをやってみればいい。

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湘南100プロジェクトメンバーとしても活動する菊池奈々さんは、フットワーク軽く、チームきっての行動力の持ち主。まちづくりスポット茅ヶ崎で、味噌・醤油・柿酢など手作り調味料や、梅干・赤しそジュースなどの季節限定の手仕事の講座「季節の手仕事 くらしの輪」を月1回開き、食文化や食育をテーマに活動しています。そんな奈々さん、実はSEやセールスレディを経て今にたどり着いたそう。行動力の源は、一見異なるSEにも通ずる「実験好き」な気質?!奈々さんの源に迫ります。

(菊池奈々さんプロフィール)
野菜栽培士・食育アドバイザー・発酵文化人。「季節の手仕事をみんなで愉しむ場をつくる」をテーマに、手作り味噌や醤油などの教室を、まちづくりスポット茅ヶ崎などで開いている。

 

― 現在、「食」をテーマに活動していますが、奈々さんは「手仕事」を始められるまで専業主婦でいらしたんですか?

奈々 いえ、どちらかというと仕事人間でした。20歳から働いていて、最初はSEとして会社勤めして、そのあと少しフリー ランスで。

― えー!知らなかった。意外です。

奈々 結婚を機にSEは辞めたのですが、結婚した後も当時の夫が始めた建築業の手伝いをしていました。夫とは、事業をたたむときにお別れしたんですけれど、そのとき娘2人を引き取って。シングルになってからは生命保険会社でセールスレディをやっていました。

― じゃあ家庭にどっぷり入っていることはなかったんですね。

奈々 そうですね。セールスレディの仕事をしながら、夜は飲食店の厨房で働いていました。それが14~15年前くらいまでかなあ。わたし、人と話すのが苦手で(笑)。セールスレディの仕事は人から誘われて始めたんですけれど、人に勧めることがなかなかできなくて、最初に契約取れた時は泣いちゃったくらい(笑)。それでも10年は続けて、その後は駐車監視員の仕事に就きました。駐輪場の管理人さんかな、と思って応募したら、おまわりさんのお手伝いなんですよね。それを4年くらい。

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― 全く異なる職種を経験されてきていますが、違うジャンルを選ぶとき戸惑いはありませんか?

奈々 なかったですね。「募集してるからいってみよう」とか。やったことがないことをやってみたいっていう気持ちがあるんですよね。

― なるほど。好奇心旺盛なんですね。

奈々 そうなんだ、自分ではわからなかったなあ(笑)。

― 周りから言われて気づくことってありますよね(笑)。今は、何をメインに活動されているんですか?

奈々 カオトオカというカフェで月に1週間~10日くらい働いています。それ以外は、「手仕事」の講座を。講座では、味噌やお酢といった調味料や、梅干しなどをつくっています。

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2020年1月開催は煎り豆と納豆でした。

― 買って済ませることもできてしまうものですよね。

奈々 そうなんですよ。でも、そのオリジナルをつくってみたいと思って。手前味噌、手前醤油、手前酢…こうしたものを手作りされている方って、「無添加」「健康・身体に良い」ってところから入る方も多いと思いますが、私の場合は、単純に面白そうでやってみたかった(笑)。「無添加で身体に良くて…」とかは後付けのカッコつけ(笑)。

― 純粋にそういうものが楽しいんですね。

奈々 そう、実験みたいな感覚なんですよね。とはいえ、それをきっちり記録して、「次はこうしよう」ってやっているわけではなく、単純に失敗しても「まあいいや」って。面白そうだなって思うことは、調べてとりあえずやってみます。

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ワインも、石村実さん(※藤沢でぶどうを栽培しているぶどう研究者)のお話を聞いて絶対やってみたいと思ってやってみました。最初はぶどうのつぶし方もわからなくて(笑)。でも、どこかで足で踏む映像を見たことがあったから、その感覚を追ってやってみたり…

― うまくやるってことを置いておいて、「面白いかな」「こうかな?」って動くから楽しめるし進みやすいのかもしれないですね。わたしは、うまくやろうとして調べていくうちにくたびれちゃう。

奈々 やってみると意外と簡単なことって多いんですよ。味噌も、醤油も。こんな簡単なこと、なんでやらないんだろって思えてきますよ。

― それってだれでも簡単にできます?奈々さんが器用だからじゃなくて?

奈々 いかに簡単にできるかってことを試行錯誤して、講座でお伝えしているんです。今は器具も発達しているから、昔の人より簡単につくれていると思いますよ。ジップロックひとつあれば味噌ができちゃうし、ペットボトルがあれば醤油ができちゃう。もちろん、発酵と腐敗って紙一重で、環境によっては腐敗することもあるから、そういう繊細さはあるけれど。

― まずは調べて、やってみるっていう実験的な気質が奈々さんの核なんだなって思いました。わたし、黒酢が好きなんですけれど、それもつくれますか?

奈々 つくったことはないけれど、たぶん…。柿酢なら漬けていますよ。

― 柿酢って身体にいいんですよね!

奈々 そうそう、でも高いでしょう。簡単につくれるんですよ。皮もむかず、ヘタをとってビンに詰めておくだけ。1日1回かき混ぜるのは必要だけど、1か月でお酢ができちゃう。生悦住さん(※インバウンド向け茅ヶ崎体験ツアー・CHIGASAKI IITABIを主宰)とお話していて、茅ヶ崎は余らせている柿農家もあるから、こんなに簡単なんだったら売り出してもいいねって話しているんですよ。

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― すごい。なんだか楽しそうだなあ。

奈々 うちの講座は、みんなでワイワイつくって、おしゃべりのほうが多いくらい(笑)。わたしもたまに失敗するし、それをみんなで笑ってる。お料理教室ってなんとなくかしこまっていて、失敗しちゃいけないような気がするけれど、この講座は違うよねって言っていただいています。

― どんな方が参加しているんですか?

奈々 1回の講座がだいたい10名くらいなんですが、2~3名くらいは男性もいますね。現役を引退された方、83歳のおじいさまとかも。奥様を亡くされてずっと家にいたんだけど、面白そうなことをやっているからってのぞいたら、そのまま楽しみになって毎月きてくれるようになったりとか。

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「梅干しをつくる会」の様子。テーブルと洗い場さえあれば、外でも開催はできるのだという。

― へー、すてきな輪ですね。奈々さんは畑もされているとか?

奈々 今はあまり時間をとれていないんですけれど、5年くらいかな、どっぷりやっていました。小さいころから、自然の恵みじゃないですけれど、そういうのが好きだったんです。宮城県に住んでいたことがあって、その時は裏が山だったので、しょっちゅう栗や柿を拾ったりして。釣りも好きです。スーパーで買ってくるよりも面白いでしょう。

― いちから何かをつくるのが好きなんですね。そういう点ではSEと繋がるような…。「手仕事」を始めたきっかけはなんだったんですか?

奈々 「畑を仕事にしたい」「これしかない」って思っていたんですけれど、娘の事故や、孫を引き取ることになったりといろんなことが重なって、思うように畑に時間を割けなくなったんです。そのとき、家の中でできること、そして、娘に引き継げるようなものを残したいっていろいろ調べたんです。もともと梅干しをつくったりはしていて、じゃあお酢もつくれるのかな?とかって調べてつくることがすごく楽しかったから、「もしかしたら、わたし以外にもこれを面白がる人がいるかもしれない」って思って。「こういうことやりたい」って声に出して言っていたら、その声を拾ってくれる人が出てきました。

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講座をしているのは、単純に楽しいから。「教えたい」っていうよりも、自分が楽しいと思うことを知ってもらいたいっていう気持ちです。あとは、日本の食文化って優秀だなって思うんです。これから国際交流が活発になって、きっと日本の食文化を紹介する機会も増える。そのとき、こうしたものをつくったことがあると、きっともっと楽しい交流ができるんじゃないかと思って。

― いまって、食べる・見るだけじゃなくて体験することが重要だから、海外からの旅行客にもいいですよね。

奈々 持ち帰って熟成させる工程があるものは旅の途中だとなかなか難しいんだけど、たとえば味噌だったら、仕込みだけやって来年また来てもらうとかね。古民家や蔵に預かってって、それならできるかもしれない。

― 奈々さんがこれからやりたいことはありますか?

奈々 小さいお子さんにも「手仕事」を体験してもらいたいと思っています。かっこよく言うと食育(笑)。本当に簡単だから、そこから食に興味を持ってもらいたい。とわ(※奈々さんのお孫さん)も梅干し漬けるのを手伝ってもらったり、畑に連れて行ったりしているので、梅干しも野菜も大好きなんですよ。

― 自分が関わっていると、やっぱり違うんですね。奈々さんは、とわくんをいろんなところに連れて行っていますよね。

奈々 預けるところがないからっていうのもあるんですよね。最初は断られるかなって気まずかったりもしたけど、今はあえて怒られるまでやってみようって思っています(笑)。わたしがそうすることで、ほかの若い親御さんとか諦めている方の力になれば。子どもを連れて行ける場所が普通にあってほしいなと思います。いまは、寄席に子どもを連れていけるようにならないかなって思っています。

― 奈々さんは、チガラボで行われるイベントの出席率も高くて、一番楽しんでいるんじゃないかなって思います。

奈々 もともとは、自分探しで参加していたんです。チガラボに出会って3年くらい、いろいろなものに参加して、なんとかしてものにしようって。

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― 自分探しされてきて、変わったことや掴んだものはありますか?

奈々 人と話すことは怖くなくなったかな。自分に自信がなくて、何もできないと思っていたけれど、そういう自分も受け入れてくれたチガラボの存在はすごく大きかったなって思います。いまだに交流会とかでは何を話していいかわからないけれど(笑)。

― 最後に、人生100年時代をいかに生きるかというテーマで、アドバイスをするとしたら?

奈々 ああしなきゃ、こうしなきゃって固定するのを捨てて、なんでもとりあえずやってみようってことかな。結果はなんでも、オールOK。そう思っていると楽しいですよ。

―「ねばならない」じゃなくて。

奈々 はい。わたしは、小さいころから計画通り進めないと怖いってタイプだったんです。でも、娘の事故や孫のことなどいろいろあって、なんでも大丈夫なんだなって思いました。失敗ってないなっていうか。失敗から学ぶとかそんな立派な話じゃなくて、単純に、失敗してもいいんじゃないかなって思うんです、それはいくつになっても。

―「やったもんがち」って言葉もありますしね! 日本の発酵食品って身体にいいし、アンチエイジングにもいいっていうから、そういうテーマでシリーズ化しても集客できそう(笑)。

奈々 わたし、プロデュース力がないので一緒にやってもらえたら嬉しいです!(笑)まちづくりスポット茅ヶ崎の講座も、柴田真季さんがフォローして企画や形にしてくれたんですよ。

― 奈々さんの手仕事、簡単に作れるものに英語のテロップをいれて作り方をYouTubeで発信とか……プロデュースしてみたいです。コンテンツをつくる人、プロデュースする人、それぞれの得意が集まって一緒にやるっていいですね、面白そう! 失敗はないから、とりあえずやってみましょう。

奈々 ぜひ、よろしくお願いします!(笑)

 

<マイレジェンドから学んだこと>

100CLUBの取材メンバーとしても活躍している奈々さん。3年前くらいに知り合ってからご一緒する機会が何度かありましたが、最近の奈々さんを見ていると持ち前の好奇心に加えて積極性が以前よりも増した印象がありました。今回お話を伺って、その理由を理解できた気がしています。「失敗したってまあいいや」という良い意味での開き直りをされたのだと感じました。教える側だからきちんとしていなければならないではなく、自分が失敗して周りがそれを笑ってくれて、逆に強みにしてしまっている。実は簡単なことではなく、様々な経験を通したからこそ腹をくくれる強さではないかと思います。奈々さんだったら失敗しても優しく包んでくれるそんな絶対的な安心感を武器にこれからも様々な場所で活躍していただきたいなと思いました。(順平)

100CLUB取材活動や手仕事の講座など、積極的かつ軽やかにこなしている奈々さん。好奇心と肩の力が抜けた行動力、その源を知りたくて、インタビューさせていただきました。全くジャンルの異なる仕事の経験も「やったことがないからやってみよう」と考えただけだとか。奈々さんの行動力の源には、“面白そうだから取り敢えずやってみよう”、“うまくやることは置いておいて”、“まあいいや、実験だから失敗ではない”という柔軟な姿勢がありました。だから、周りにいる人も肩の力をぬいてやってみようと思えるのでしょう。奈々さんの「手仕事」の簡単さをきいているとやってみたくなります。簡単にできる楽しさをもっと多くの人に知ってほしいと思います。コンテンツを作るのは好きだけど、提供する場づくりは苦手という奈々さんとタッグを組んで、茅ヶ崎から、湘南100CLUBから、簡単に楽しめる「手仕事」を発信できたら面白そう! やってみたいと思います。(昌美)

 

取材:山口昌美、山口順平
撮影:岩井田優
文:もりおかゆか