“世の中基準”に縛られることなく、 自分が「コレだ!」と思えることを選び取っていきたい。

Ohmori-san Photo

17歳で高校を辞め、工場で働き始めたのがキャリアのスタートだったという大森賢次さん。しかし、「このままでいいのか?」と疑問を抱き、18歳で定時制高校に入学。情報処理系の専門学校を経て、現在はシステム系の会社で技術者として働いています。昨年10か月の育休を取得し、その間に、働き方を考え直したという大森さん。全く新しいコミュニティに足を踏み入れ、視野を広げたことで、「会社」から解放され、考え方が変わったといいます。「自分のこれからが超楽しみ」と話す大森さんのマイストーリーを紐解きます。

ー早速ですが、けんけんさんのキャリアのスタートから教えていただけますか。

大森 情報処理系の専門学校を卒業して、今は品川にあるシステム系の会社で働いています。でも、キャリアのスタート、というともっと前なんですよね。

高校でソフトテニス部に入っていたんですが、部活ばっかりやっていたら、2年の時に進級が難しいってなったんです。テストがほぼ追試とかで。それで、進級するなら部活は辞めなくちゃならないってなったとき、「部活ができなくなるなら学校にいる意味がない」って思って学校を辞めてしまったんです。それで、茅ヶ崎にある明治乳業の配送工場に勤め始めました。それが、17歳のとき。

ー17歳から働いていたんですね!そこから今の仕事に至るまでにはどんな経緯が?

大森 友だちにも中学卒業してすぐ働いている奴はいたし、最初は楽しかったんですよ。でも、1年くらい経ってふと周りの大人たちを見たときに、「自分は先々こうなっていくのか」と将来像と重ねて考えたんですよね。働いて、呑んで、ギャンブルして……それを繰り返す毎日で。それはそれで楽しかったけど、それだけになるって考えたら、別の道に行きたいと思ったんです。

それに、よく考えてみたら、大工になった友だちとかは、「やりたいから」っていう理由だったんですよね。一方のぼくは、「勉強したくないから」って、逃げみたいな感じで。だから、学校くらい出ておくかって思って、18歳のとき定時制高校に入りなおしました。

Ohmori-san Photo No.2

―高校3年の年齢で、1年生に入りなおしたんですよね。勇気がいりませんでしたか?

大森 これ以上悪くなることはないだろうって思ってたから、全然。働きながら3年間通って、卒業したのが20歳の時でした。17歳で高校を辞めたことで一回しくじっているって思っていたから、次は失敗したくなくて、食いっぱぐれることがないものを、と情報処理系の専門学校に進学しました。そこは2年間だったから、結局就職するタイミングはみんなと同じ、22歳でした。そこから10年くらい、ずっと今の職場で働いています。

―今の職場で、昨年育休をとられているんですよね。

大森 そうです、去年の1月から11月の終わりくらいまで10か月間。こんなに長く育休を取るのは自分が始めてでした。

―男性の育休ってまだまだ少ないですし、それもまた勇気がいることではなかったですか?

大森 そうですね。正直なところ、昇進したいとか、評価を気にするのであれば言いづらいかもしれないです。子どもができたら育休をとろうとか、最初から考えていたわけではないです。育休の制度があることを知って、これはいいな、と思って。まあ、正直なところ、身体的にも疲れがきていたところだったから会社から離れたいという気持ちも、少しはあったかな。

―そうなんですね。育休中は、奥様を手伝ったり?どんな過ごし方をされていたんですか?

大森 今振り返ると、子育て半分、自分を守ること半分……かな。子どもが生まれて3~4か月くらいは外出できないし奥さんも大変そうだったから、家事や育児をなるべく分担できるようにして、家にいて手伝うことも多かったです。でも、子育てに少し余裕が出てくると、奥さんも一人の時間が欲しくなってくるんですよね(笑)。そうなると、逆に自分がずっと家にいることが負担なのかなって思ったりして。子どもを連れて外に出て奥さんを一人にすることもあれば、僕自身が一人外に出て、次につながることをしたいって思うようにもなっていきました。育休って、会社と家族からいただいている時間だから。勿体ない使い方をしたくなくて。

Ohmori-san Photo No.3

―その、次につながるものを探すタイミングで、チガラボに?

大森 そうですね。長く休みをもらう中で、「もう一度あの(仕事の)大変さに戻れるのか」って疑問を持つところもあったんですよね。体力の面もそうだし、果たしてそれは楽しいことなんだろうか、とも思って。それで、本を読んだり、会えてない人に会ってみたり、働き方についても考える時間にしていました。チガラボはFacebookのイベントページで見つけて、「はじめてのチガラボ」に参加したのが最初です。

―チガラボは、どんな印象でしたか?

大森 すごいイケてる場所あるなって(笑)。イベントに参加していろんな人に会いました。何回か出た後に、社会人インターンも経験しました。去年の7~8月くらいかな。イベントの手伝いをしたり、事後レポートを書いたり。

チガラボで出会う人みんなに、刺激を受けました。「それってありなの?!」って思うくらい自由で(笑)、同時に楽しんでいる。もちろんみんな自分なりに責任を取っているのだと思うけど、そういうのってありなんだなって思うことができました。家族や友達、会社以外のコミュニティに参加したことがなかったので、そういう場所に触れてみると、人の居場所って、どこにでもあるのかもしれないって思えたことが良かったですね。自分は、自分で勝手に枠を限定して、既成概念にとらわれていたなって。「社会人はこうあるべき」って思ったり。それってきっと、ロールモデルが会社の先輩とかしかいなかったからなんですよね。もっと緩くていいんだって、余裕を持てるようになりました。

―充実の育休期間だったんですね。復帰してから何か変化はありましたか?

大森 一番変わったのは「会社」というものの捉え方だと思います。休む前は、会社ラブ過ぎて(笑)、自分にとってとても大きな存在だった。縛られていたっていうほうがいいかもしれないです。でも今は、所属しているコミュニティの一つ、という認識になりましたね。自分が「働く」と決めて働いているだけの場所。

正直、休み明けに会社に行ったとき、デジャブだったんです。17歳のとき、工場で働く大人を見て「ここで働き続けるのは違う」と思ったのと同じ。その感覚がシンクロしたんですよね。

Ohmori-san Photo No.4

―「会社」という存在から解き放たれた感じですか?

大森 そうですね。「どこに所属しているか」よりも、個人として「何ができるのか」「何をしているのか」がすべてだって思うようになりました。会社がなくなったとしたら、「誰にどんな貢献ができるか」がすべてになるから。「誰に何ができるのか」それを得るために、職場を利用したほうがいいって今は思っています。

―けんけんさんが今後やっていきたいことはありますか?

大森 今の世の中って、資本主義の中で「お金を稼ぐ」ってことが一番にきていると思うんです。たとえば、家を買う、子どもを育てる、どれもお金がかかることだから、金銭面を考えると仕事の選択に制約が生まれてしまう。それに違和感を感じるし、そうだとしても、「子どもがいるから」「ローンがあるから」とか、そこに言い訳する人にはなりたくないって思うんです。どんな理由があったとしても、全部、自分が決めて選んでいることだから。

今年32歳になるんですけど、周りは大体30歳くらいで家を買ってるんですよね。定年まで働いてローンを返してってそれが通説で……そういう話になると、「(家を買うには)年齢的にギリギリじゃん」て言われることがあったりして。でも、それも意味わかんない(笑)。「こうあるべき」や「世の中基準」にとらわれず自由でいたいって思いますね。

これからずっとお金を中心に考えるのか、それともお金や待遇ではない面を追求してみるのか……別のものを追い求めてみるのもいいのかなと今は思っています。

Ohmori-san Photo No.5

―最後に、けんけんさんにとってキャリアとはどういうものですか?

大森 結論、“人それぞれ“って思っているけど(笑)、自分にとっては、楽しめればいいのかなって思っています。目標はあったほうがいいし、道筋やアウトラインは見えてないより見えているほうがいい。でも、それに囚われすぎずに、過程も楽しむことができたらいいかなと思っています。

いまの自分と全然違うこともしてみたいですね。今なら、どこでもやっていけるような気がするから。これからが超楽しみです(笑)。いい30代にしたいなと思います。

―ありがとうございました。

<インタビューを終えて>

けんけんが登場すると、場が一気に明るくなるんです!インタビューでは周りを笑わせるような受け答えもありましたが、世の中の基準や周りに流されない、常に自分の選択を大切にしてきた芯の強さが伝わってきました。
育休においては「会社と家族から頂いた時間」という言葉が印象的でした。置かれた状況を無駄にせず、周りへの愛と器の広さも感じ取れました。けんけんの前向きさ、明るさで切り開いていくこれからのキャリアが楽しみですね。(山添 夏奈)

家族や友だち、会社以外のコミュニティに入ったことで、会社と自分の新しい関係性を見つけていった大森さん。「自由で、楽しんでいたい」という言葉通り、インタビュー中ずっと笑顔で話をされていたのが印象的でした。育休中の奥さまとのエピソードなど「優しいですね」と感心するインタビュアーに、「(自分は)気が弱いだけ」と笑ってみせる場面もありましたが、自分が決めたことや選んだことはきっちり自分が責任をとるのだ、という芯の強さも見え隠れするインタビューでした。(もりおか ゆか)

インタビュー:山添 夏奈
写真:岩井田 優
編集:もりおか ゆか