いつでも誰かに支えられてきたこれまでを、 今度は自分が、返していきたい。

茅ヶ崎のコワーキングスペース「チガラボ」で、CareerCafeやスナックひろみなど女性のキャリア支援を中心としたイベントを開催している木村さん。21歳で社会人をスタートしてから、気づけば人生の大切なタイミングはいつも、周り人から支えられ、励まされ、時に引っ張り上げてもらいながら進んできた、と言います。何も特別なことはしていないと思う、と笑う木村さん。人との関わり方や仕事への姿勢も交えて、木村さんのマイストーリーを紐解きます。


ー今日はよろしくお願いします。さて、ではまず、ひろみさんのキャリアのスタートから、お伺いできますか?

木村 21歳のとき、アルバイトで働き始めたのが最初です。わたし、20歳で出産していたので、「子どもを養わなければ」という現実的な問題が目の前にあって、仕事は生活のため。だから、最初のころは、仕事にやりがいを見出そうなんて、考えたことはなかったですね。

―生活のために、ってそういうところからスタートしたんですね。

木村 そうですね。初めてお給料をいただいたときは、ほんとうに嬉しかった。アルバイトなので、10万円いかないくらいだったと思うんですけれど、誰にも頼らず、子どものために自分が稼いだんだ、ってことが嬉しかったし、達成感がありました。

でも、昼夜問わず働いていたので身体を壊してしまって。それで、フルタイムで会社勤めをしようと決めて、ウエットスーツの会社で営業事務の仕事に就きました。電話対応もPCを扱うのも初めてだったんですけれど、その会社で、「仕事って楽しい」って感じ始めました。

―そうなんですね。どんなことが楽しかったんですか?

木村 事務担当として、営業さんが受注してきたデータを受け取って、工場に発注をかけるっていう仕事だったんです。受注から納品まで一連の行程に関わることができたことが楽しかったのと、3人の営業さん、それから工場の方々と、チームで一つのものをつくりあげてお客様に届けるという経験が、すごく楽しかったんですよね。

残念ながら、倒産してしまって、3年ほどで次の仕事に移りました。

―次の仕事はどうやって見つけたんですか?

木村 わたし、何社かを経て今の会社に在籍しているのですが、すべて人からの紹介で入社させていただいてるんです。わたしを拾ってくれたんだから、その人の顔に泥を塗らないように力になりたい。お返ししたい、ってどの会社でもそんなふうに働いていました。

―紹介してもらえるってことは、ひろみさんに魅力があるってことだと思いますよ!

木村 そうでしょうか(笑)小さいころから、自分のことよりも「人のためになっているか」ってことを、考える癖がありました。

両親が自営業で、毎日懸命にお店に立ち、お客様仕事をしている姿をみてきました。「お客様」がいるから、「誰かのために」働くから、暮らしていける。そんな流れを身近に感じてきたからこそ、「人のため」という価値観ができたのかもしれません。

―自分では、どんなところに魅力をかんじてもらってる、と思いますか?

木村 なんでしょう!(笑)みなさん、ギブアンドテイクではなくて、純粋にわたしが困っているときに手を差し伸べてくれたんですよね。

―たとえば、こんなことを言ってもらえた、とかでも。

木村 そういえば、去年、以前お世話になった社長とお会いする機会があったんです。12年ぶりくらいの再会だったんですけれど、わたしのことを覚えていてくださって。「あのときは、社内の雰囲気がほんとに良くなったよ」って言ってくださったんです。それから、「今、繋がれたことが嬉しい」って。そのときはほんとに嬉しかったです。

―それはすてきな体験ですね!「社内の雰囲気を良くする」ってどんなことをされていたんですか?

木村 そこは、フィットネスの会社だったんですが、個々で仕事をする会社で。その前の会社がチームで働く会社だったので、その光景を見たとき、もっとチームでお互いの仕事の情報などを共有しながら働いたほうが効率がいいんじゃないかな?と思って、積極的に社員と話すようにして、社員同士のハブのような役割をしていたんです。そうしたら、社内で会話が増えていったような感じはありました。

―いくつかの職場を経験する中で吸収していったものを自分だけのものにせず、次の職場に還元しいていく。ひろみさんにはそんなところがあるように思いました。

木村 仕事に対して、ネガティブに思ったことってないんです。できるだけ、自分が仕事しやすい環境に、自分が動いて、変えていくようにしていたから、「あの会社嫌だった」とかもないですね。

―今は、どんなお仕事をされていますか?

木村 もともと派遣として働いていた会社で、上司が拾ってくれて正社員になりました。社員のために働きやすい環境をつくることを仕事にしています。メンタル・フィジカルのケアをして、社員を守るお仕事です。カウンセリングなど、勉強をしました。

―お仕事は、楽しいですか?

木村 そうですね。今の仕事って、どれだけ尽くしても、上限がないんです。社員が健康で、働きやすい環境になれば、パフォーマンスが良くなって、会社の業績もあがる。そしてわたしも感謝される(笑)ポジティブな連鎖を生み出せる仕事だと思っています。

 

ーチガラボと出会ったきっかけは、なんだったんですか?

木村 それも、人からの紹介です(笑)会社で研修にいったとき一緒のチームだった方に「シングルマザーのサポートをしたい」って言ったら、「女性のキャリアを考える団体があるから、ぜひ来てみて」って言われて。行ってみたら今度はそこで知り合った方が鵠沼の絵本会を紹介してくれて。で、鵠沼の絵本会の方が、CareerBARを紹介してくれました。

―いろんなつながりでチガラボにたどり着いたんですね!さっきの仕事の紹介のはなしもそうだけど、ひろみさんは、きちんと発信しているから、紹介してくれるのかもしれませんね。

木村 確かに……女性の支援をしたいってことは、いろいろなところで言っていました。ポイントは、「きれいな言葉で伝えようとしない」「隠さない」ってことかもしれません。シンプルに、堅苦しくなく、「なんかわかんないけど」のレベルでも口に出してみていいと思っています。

―女性の支援は、具体的にどんなことを考えていたんですか?

木村 わたし自身がシングルマザーで、いつも誰かに助けてもらって生きてきたと思っているんです。同じような環境で、どうにも八方ふさがりになってしまったり、仕事と家庭の両立で心がギスギスしてしまったり……そんな状況でも、誰かが手を差し伸べれば救われるものがある。わたし自身がそれを経験しているからこそ、それを、もっと広げていきたいって思っていました。

―具体的になにかされていたんですか?

木村 カウンセラーの資格をとったとき、行政の支援に登録しようと思ったんです。でも、そこに楽しさを見出せなくて。確かにわたしがやりたいと思っていることはできる、だけど、楽しいかな……?って。何か楽しいことをしながら、サポートをできないかなって思っていました。

―なるほど。そのあとチガラボのCareerBARに?

木村 はい。CareerBARは、ほんとに楽しかった!初めて行ったときは、映画を見ながら主人公の気持ちを感じて、それを共有するというものでした。人によっていろんな見方があることを知れて面白かったし、それを臆することなく言える環境が、なにより楽しく感じました。今までそういう場所がなかったので。

―会社や行政は、ゴールがあるからそこをどうしても意識してしまうんですよね。そのバイアスがかからなかったのかも。

木村 そうですね。CareerBARには、その場で目指すゴールはありませんでした。自分の中に持ち帰って、反芻して、自分の考えを見つける。その場でそれを出さなくていい、というスタンスも良かったです。

―CareerBARに参加したことで、何か変化はありましたか?

木村 「女性のサポートをしたいんです!」って言ったときに、「じゃあやってみる?」って声を掛けてもらったことが新鮮でした。不安はあったけど、CareerCafeをやってみて、でも失敗して、つぎはスナックひろみをやってみて……わたし真面目が合わないんだなって見えてきました(笑)ガチガチだった力が緩んで、そこから見えてきたものがあったなって。

 

―まちのキャリアラボでは、これから何をしてみたいとか、夢はありますか?

木村 CareerCafeやスナックひろみは続けたいです。人の話を聴くことに重きを置いて、来てくれた人が、笑顔で帰ってくれる。そんな深刻になりすぎず、自分の思いのたけを話せる安全な場所ってなかなかないですよね。

話すことで自分のことを再認識したり、リセットして明日につなげていったり。キャリアラボでそういうことができたらいいなと思います。一日一日を大切に、今を生きて、明日につなげる。そんなことができる場所が茅ヶ崎中にできたらって思うとワクワクします。

―言ったことを「じゃあやろうよ!」ってアクションにつなげられるのが、CareerBARらしさであり、意味だよね。

木村 こういう場所が増えていったら、前を向く人が増えて、その人たちが繋がったらさらに大きなパワーになる。そうしたら、もっともっと大きなことができるようになるはずです。

―最後に、ひろみさん個人は、これからどんな人になりたい?

木村 誰かの話を聴いて、送り出せる人になりたいです。明日につながるように、ぶんなげる!(笑)跳び箱の、踏切板あるじゃないですか。そんなふうに、飛躍するサポートがしたい。わたし自身も、「誰かのために働く」ことが幸せだし、そうすることでわたし自身の人生も、喜びが多いものになるんじゃないかなと思います。

―ありがとうございました。

<インタビューを終えて>
インタビュー中も、ずっと笑顔で話してくださっていたひろみさん。「恩をあだで返すようなことはしたくない」と芯を持って全力で目の前の物事に取り組んでいく姿から、「ひろみさんがいれば、大丈夫。信頼できる」と、ご紹介につながっていく理由が、なんだかわかる気がしました。「ひろみさんに話を聞いてもらいたい」そんなふうに感じたインタビューでした。

インタビュー:中村 容
写真:岩井田 優
編集:もりおか ゆか