何かやりたい。でも見つからない。 そんなリタイア世代の人に、 Web制作という一歩目を提供したい。
退職後にWeb制作会社を立ち上げ、湘南のお客様を中心に人脈を広げている四條邦夫さん。そんな「生涯現役」を実践している四條さんに、Web制作で起業するまで、現役時代の経験の活かし方、そしてこれからの展望をお聞きしました。
(四條 邦夫さんプロフィール)
ソフトアシスタンス株式会社 代表取締役。大卒で松下電送㈱に入社し、小西六写真工業㈱(現コニカミノルタ㈱)に転職。FAXや複合機のソフトウェア・ハードウェア・ソリューションシステム開発や新規事業開発に従事。今までのプロジェクト推進の仕事経験を生かし、退職後はホームページ制作 (以下Web制作)に邁進。仕事中に上級ウェブ解析士資格取得。
―こんにちは。本日はよろしくお願いします。まず普段どんなことをされているか教えていただけますか?
四條 企業勤めを卒業して、ソフトアシスタンス株式会社というWeb制作会社を自分で起業し7年目に入ります。
―まさに生涯現役を実践されていますね。湘南にはもともと縁があったのですか?
四條 もともと湘南に住んでいたんです。ただ、現役時代は都内に勤務していたので、湘南で活動する機会はほとんどありませんでした。それもあって、退職後は住んでいる地域で何か始めたいと思ったんです。
―なるほど。では、Web制作を選んだのはなぜだったのでしょうか。
現役時代にプログラミング開発などに携わる技術屋だったこともありますが、主には3つ、理由があります。
一つは、お客様からの反応を直接感じられる仕事がよかったこと。それから、多少なりとも収入が得られる活動にしたかったこと。そして、個人事業主や経営者の方をお客様とすることで、湘南の地元に人脈をつくりたかった、という気持ちもありました。
―それを実現できるのがWeb制作の仕事だったのですね。最初のお客様を探すのは大変ではなかったですか?
四條 もともと地域で活動を始めるためには人脈が必要だ、と感じていて、退職してからは異業種交流会などに積極的に参加していました。そこで出会った司法書士の方のWebをつくらせてもらったのが最初の仕事です。
5万円で受注をして、2~3か月かけて作りこみました。お互い創業したばかりで時間があったので、どんな司法書士を目指しているのか、どんな方をお客様にしたいのかなど綿密に打ち合わせができました。その結果、お互いの理解が進んで、その方の温かいお人柄を表すようなWebを完成させることができました。集客効果が出て、ありがとうと言ってもらえた時は涙が出るほど嬉しかったですね。
幸運にもその初仕事で集客成果を出すことができました。そのWeb経由で、今でも月15件くらいの問い合わせが入っています。
―とても良いスタートがきれたのですね。
四條 もともと技術屋ではありますが、Web制作は退職後から携わりました。そんな私でも比較的速くWeb制作業者になれたのは、WordPressというWeb制作ツールと、良いデザイナーと組めたおかげです。
―ともに組むパートナー探し、もキーワードになりそうですね。ほかにはありますか?
四條 上級ウェブ解析士というWebの診断資格を取得したことでしょうか。
Webを作ったのはいいけれど、そのまま放置しているケースがとても多いんです。ウェブ解析士資格を取得したことで世の中のWebの流れを知ることが出来るようになった。つまり、お客さんに対して「ここがだめです」と指摘できるようになりました。世の中には期待はずれの全く効果が出ていないWebがたくさんありますが、それに対して改善提案をさせていただき、その結果、成果がでて感謝されたケースなどはとてもやりがいを感じます。
―すばらしい流れがすでに出来上がっているのですね。Webを作るうえで大事にしていることは何かありますか?
四條 発注者の言うことそのままを聞くことはしない、ということでしょうか。
Webを見るお客様は誰か、ビジネスの提供価値と他社との差別化ポイントをWebでどのように表現するのか、を大切にしています。そのためには発注者の方のビジネスを深く理解する必要があるので、それを自分で勉強する。それがとても楽しいしやりがいになる。発注者ご自身も気が付いていない商売の売りポイントを一緒に整理できるんです。
最初に携わった司法書士のWebサイトも、その流れがあったからこそ、集客成果を出すことができたのだと思っています。
―なるほど。現役時代には、どんなお仕事をされてきたのでしょうか?
四條 もともとプログラム開発など技術者として働いてきました。最初は松下電送㈱に入社し、その後、現コニカミノルタ㈱に転職しました。現コニカミノルタ㈱では、コニカ㈱とミノルタ㈱の統合の時に開発部門の最前線で両者の統合製品の開発に携わらせていただきました。その経験から、その後、東京、愛知、兵庫の3拠点の開発センター長として、正社員、契約社員合わせて1000名くらいのメンバーの組織運営を担当させていただいたことがありました。
―1000名・・・
四條 その中で苦労してプロジェクトを進めるということを学んだので、何が起きるか、問題になるかということは、おおよそ読めるようになっていきました。それは、今の仕事にも活きているかもしれません。
50代からは、ソリューションと呼ばれるシステムサービス事業や、コンサルタント事業など、新しい新規プロジェクトも経験しました。
―常に時代の最先端となる花形のサービスに携わっていらっしゃいますね。
四條 ありがたいことに会社員としてとても幸せな経験をさせてもらったと思っています。いつもチャレンジをしないといけないようなところで仕事をさせていただきました。
私の上司だった方が、私が係長の時に課長、課長になった時に部長。その後、その方は会社のトップにまでなられ、今でも会社の要職を務められています。当時は、厳しく指導を受けましたが、それは非常に納得のできる内容で、不満に感じたことはありませんでした。ご自身、自らにも厳しい方で、絶対弱音を吐かない。私のマネージャーとしての理想像、私にとってのレジェンドですね。
―チガラボに来るようになって色々感じるとことがあると仰ってましたね。
四條 はい。みんなで何かやろう・やってみようという風土が自分にとってはとても心地がよいです。他にも色々な交流会に顔を出していますが、交流会って普通は商売のために助け合おうという明確な色がありますが、チガラボは違う。失敗してもいいから、まずやってみる、みんなで何か作り上げようという雰囲気があり、自分に合っている気がします。
社会貢献ありきというよりは、自分の楽しいことの延長が、結果として社会の良いことにつながっているくらいがやりやすいと感じています。その流れで湘南100CLUBと出会いました。
―湘南100CLUBを通じて実現したいことはどんなことですか?
四條 第二の人生をどのように過ごすか社会テーマになっていますよね。シニア世代の中で、「変化を好む変化志向」×「自分から動くことに躊躇する慎重行動派」の、いわゆるセカンドライフモラトリアムの人が周囲にも多いなと感じています。
―何かやりたいけど、自分で見いだせないセカンドライフモラトリアムの人・・・
四條 はい。データでもシニア世代の30%近くがそれにあたると言われ、最も多い割合になっています。
そうした方に対して、自分が学んできたWeb制作やWebマーケティングの魅力やノウハウを提供して、第二の人生に踏み出すきっかけを提供したいと思っています。
―とても素敵な取り組みだと思います。
四條 チガラボの皆さんとミーティングを重ねる中で、シニア層の方だけでなく、複業を検討している人や湘南エリアでの仕事を増やしたいというクリエイターの人を巻き込んだらどうかという話も出てきて、それを含めて「セカンドワーク プロジェクト」というものを立ち上げつつあります。「セカンドワーク」というのは、シニアの方のリタイア後の「第二の仕事」という意味と、現役世代の方の正業に対する副業、即ち「第二の仕事」という二つの意味をもたせた言葉で、我ながら気に入ってます。
―湘南100CLUBでは「人生100年時代を自分らしく豊かに生きる」人をインタビューしていますが、その秘訣は何だと思いますか?
四條 お金を稼ぎ、それ以上の価値を提供することですかね。
会社を興して6年、運動はしてもゴルフくらいなので体力は変わらないですが、脳みそはすごく鍛えられている感じがしています。その原動力は、結局のところ、お金を頂くということなのではないかと思います。
例えば奥さんが参加しているサークルのWebを「ボランティアで作って」と言われるとしますよね。その時って、あんまりこだわりとか向上心とかがない感じがするんです。一方、事業拡大・集客のためのWebを作成する場合、徹底的に打ち合わせして、事業オーナーのビジョン・想いに触れる。それを、自らの能力を振り絞ってWeb制作につなげる。良いWebができて、集客もできる。するとお客様から感謝され、お金も頂ける。
―確かに緊張感が違いますね。
四條 ものすごく集中して、自分で勉強をして、いいものを作ろうという気になるんです。うまくいかないことがあったら、ネットで調べてのめりこんで夜中の3、4時になってしまうこともあったりするんです。若いころのように。
身体にはよくないのかもしれませんが、脳みそはフル回転しているんですよね。それを繰り返しながら結果が出ると、次もまた挑戦してみたいという向上心が出てくる。今も、月2回は新たな知識や技術を取り入れるために、都心のセミナーに参加しています。技術の進歩がとても激しい中で、お客様に良いものを提供するには常に勉強していなければいけない。
―そのキーワードが稼ぐということですね。
四條 はい。麻雀やゴルフなどお金を使って遊び歩いているだけでなく、自分も稼いでいるということを奥さんに対して説明ができるのも、大きな動機である気がしています。
―他に大事なキーワードはありますか。
四條 お客様への誠意でしょうか。お客様のご要望や不満は、まず絶対的に重要として、何らかの解を出すようにしています。お客様のご要望や不満をさらっと受け流したり、結局何もやらなかったりすることもある、と耳にしたりしますが、それって私からするとすごい気になります。
私は、検討の結果、対応ができなかったとしても、対応できない理由も含めて説明をするようにしています。それによって信頼感が増えていっている気がしますね。それはひょっとすると訓練がいるかもしれません。
―訓練ですか。
四條 はい。Web制作においては、エンドユーザーのお客様と直接やりとりをすることになります。今起きている課題について、すぐに解決せねばなりません。退職世代によくありがちな「私は部長をやっていました」では通用しません。でも、シニアの皆さんは会社で多くの経験を積み、一つ一つの課題に誠実に対応できる資質を持っていると思います。
そういう方々とこれからも新たな事業、プロジェクトを作っていけるといいなと思っています。
―四條さんのようなロールモデルになる方が増えていくと私たちも勇気づけられますので、ぜひこれからも頑張ってください。インタビューは以上となります。ありがとうございました。
<インタビューを終えて>
四條さんの持っている経験のベースは、プロジェクトマネジメントなんだなということがよくわかりました。Web制作の知識やスキルも大事ですが、Web制作チーム全体をリードするために、見えないものを可視化して、周囲の人を巻き込む力が成功のカギになっているのだと感じました。
私も仕事でプロジェクトを運営する仕事をしているので、四條さんのお客様に向き合う考え方、やり方からとても学びが多かったです。そしてそのようなスキルは、退職後に異なる仕事をしても活用できるということを知ることが出来て、勇気づけられました。
インタビュー:山口 順平
写真:岩井田 優
編集:もりおか ゆか